高校生のための上演作品ガイド

カテゴリー: 再録 オン 2003年2月4日

白水社から『高校生のための上演作品ガイド』が出ました。同社が刊行を続けている「高校生のための演劇書シリーズ」*1 の一環で、同じく長谷川義史氏の装丁です。

「高校生のための」と付いてはいますが、国内外・新旧50本の名作戯曲の上演時間、男女別登場人物数、あらすじ、解説、見どころ抜き書き、戯曲入手方法がコンパクトにまとめられ、一般のカンパニーにも充分参考になります。国内作品では三島由紀夫『近代能楽集』から松尾スズキ『マシーン日記』まで収められた、非常に幅広い選択肢です。

私個人は高校生には新しい感性のオリジナル戯曲を書いてほしいし、高校生がこれら名作戯曲を本当に理解して上演出来るのか疑問に思う部分もありますが、一般向けにはかなり便利なガイドブックでしょう。制作者も上演企画の検討や、純粋に名作戯曲の知識を得るために持っていて損はないと思います。

著者は元『新劇』編集長の岡野宏文氏。やわらかい文体に勇気づけられ、これを読んだ高校生は学校側と闘って『マシーン日記』を上演してやろうと思ってしまうかも。最近の小劇場作品が多数収録されているため、眺めていると自分自身の観劇の記憶が甦り、物語(戯曲)の持つ力を改めて実感させられます。

ただ、上演許可を絶対に出さない三谷幸喜氏の『12人の優しい日本人』を入れたのはどうでしょう。劇作家によっては上演許可やコンクール向けに短くするのを認めない場合があることを、もっとはっきり書いたほうがよいのでは。上演許可の必要性に触れてはいますが、高校生のときから著作権は強く意識させるべきだと思うのですが。

  1. 白水社サイトから消えているため、Internet Archive「Wayback Machine」(2003年6月29日保存)にリンク。 []
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劇団四季と浅利慶太

カテゴリー: 再録 オン 2002年11月28日

文春新書11月の新刊で『劇団四季と浅利慶太』が出ました。演劇評論家ではない政治分析の専門家が書いた異色の一冊です。本書の冒頭にも書かれていますが、四季を本格的に論じた書籍というものは、これまでほとんどありませんでした。四季を語るということは、作品だけでなくその経営やマーケティング、芸術と興行の両面を見つめなければなりません。舞台の上しか見ていない多くの演劇評論家に四季の全体像がつかめないのは、当然かも知れません。

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