燐光群全作品でベスト3に入るのではないかと思われる『九月、東京の路上で』(7/21~8/5、東京・ザ・スズナリ)。本番では上演されなかった、前説を兼ねた冒頭シーンの台本が、坂手洋二氏のブログで8月11日公開されました。
2015年に創業100周年を迎えた白水社の「創立百周年記念出版」として、『日本戯曲大事典』が9月23日に発行されます。
稽古場で最初に台本を配布し、俳優が配役に合わせて台詞を読んでいくことを「読み合わせ」といいます。小劇場演劇の場合、これを「本読み」と呼ぶ現場が多いようですが、これは誤用です。「本読み」は戯曲の劇作家または演出家が、シーンの意図を説明しながら一人で読み聞かせる行為を指します。
アマゾンの電子書籍(Kindle版)を使った自費出版「KDP」(Kindle ダイレクト・パブリッシング)を最も活用している日本の劇作家は、京都の田辺剛氏(下鴨車窓主宰)です。
白水社から『高校生のための上演作品ガイド』が出ました。同社が刊行を続けている「高校生のための演劇書シリーズ」*1 の一環で、同じく長谷川義史氏の装丁です。
「高校生のための」と付いてはいますが、国内外・新旧50本の名作戯曲の上演時間、男女別登場人物数、あらすじ、解説、見どころ抜き書き、戯曲入手方法がコンパクトにまとめられ、一般のカンパニーにも充分参考になります。国内作品では三島由紀夫『近代能楽集』から松尾スズキ『マシーン日記』まで収められた、非常に幅広い選択肢です。
私個人は高校生には新しい感性のオリジナル戯曲を書いてほしいし、高校生がこれら名作戯曲を本当に理解して上演出来るのか疑問に思う部分もありますが、一般向けにはかなり便利なガイドブックでしょう。制作者も上演企画の検討や、純粋に名作戯曲の知識を得るために持っていて損はないと思います。
著者は元『新劇』編集長の岡野宏文氏。やわらかい文体に勇気づけられ、これを読んだ高校生は学校側と闘って『マシーン日記』を上演してやろうと思ってしまうかも。最近の小劇場作品が多数収録されているため、眺めていると自分自身の観劇の記憶が甦り、物語(戯曲)の持つ力を改めて実感させられます。
ただ、上演許可を絶対に出さない三谷幸喜氏の『12人の優しい日本人』を入れたのはどうでしょう。劇作家によっては上演許可やコンクール向けに短くするのを認めない場合があることを、もっとはっきり書いたほうがよいのでは。上演許可の必要性に触れてはいますが、高校生のときから著作権は強く意識させるべきだと思うのですが。
- 白水社サイトから消えているため、Internet Archive「Wayback Machine」(2003年6月29日保存)にリンク。 [↩]