この記事は2016年11月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。
佐藤商事(花まる学習会王子小劇場)が急な坂スタジオ次期運営団体に応募して僅差で次点、首都圏ではコペルニクス的発想の転換となる民間劇場の挑戦
11月15日に発表された急な坂スタジオ(横浜・野毛山)次期運営団体選考結果には驚きました。
花まる学習会王子小劇場(東京・王子)を運営する佐藤商事株式会社が応募し、僅差で次点になったのです。最終的に現在の運営団体である特定非営利活動法人アートプラットフォームが選ばれましたが、項目によっては佐藤商事の評価が上回り、選考報告書でも高く評価されています。
横浜市文化観光局サイト「【次期運営団体が決定しました】急な坂スタジオ(旧老松会館)次期運営団体の公募について」
急な坂スタジオは指定管理者方式ではなく、運営団体の自由度が高い無償の施設貸与方式です。民間劇場とスタジオを経営し、様々な自主事業を行なっている王子小劇場が、花まる学習会のネーミングライツで経営的に安定した今年、さらなる挑戦を図ったのでしょう。東京都北区の稽古場施設「ココキタ」に転職された玉山悟氏のサジェッションもあったのでしょうか。
特に注目したのが、これまで首都圏では民間劇場と対立する軸で語られていた公共施設の運営に、民間劇場自身が名乗りを上げたことです。急な坂スタジオは劇場ではなく稽古場施設ですが、コペルニクス的発想の転換ではないでしょうか。この論理で行くと、公共ホールの指定管理者に民間劇場がなってもいいわけです。確かに、ART COMPLEX 1928(京都・三条御幸町)を運営するリッジクリエイティブ株式会社が、共同事業体で大阪市立芸術創造館(大阪市旭区)の指定管理者になっているように、他地域では前例があります。
これまで首都圏の指定管理者・運営団体は、自治体の外郭団体、アート系NPO法人、施設管理会社などの争いでしたが、自主事業が盛んな民間劇場も参加すればいいし、企画提案力もアート系NPO法人と遜色ないことが、今回の結果で示されたと思います。佐藤商事の挑戦はまさに目から鱗でした。