ウェブ版「New Theatre Review」の福岡演劇史を掘り起こす記事から目が離せない! 地域の制作者のヒントとなる内容も多数掲載
福岡の演劇批評誌『New Theatre Review』(N.T.R.)の編集長だった柴山麻妃氏が、2023年にウェブ版として復活させた「New Theatre Review」サイト。今年になって福岡の演劇史を掘り起こす貴重な記事を連発しています。
『New Theatre Review』は1999年9月に0号として創刊、大学院で文化人類学を専攻していた柴山氏がブラジル滞在で休刊した1年を挟み、10年9月の35号まで発行されました。03年12月発行の11号特集「制作のお仕事」*1 では、fringeも協力して演劇制作に関するQ&Aを執筆しました。
復活したウェブ版では、今年1月に佐藤順一氏(演戯集団ばぁくう)、2月に広瀬健太郎氏(劇団風三等星)と、福岡で35年以上活動するカンパニーの主宰にロングインタビュー。そして4月には「福岡演劇の歴史」として、78年旗揚げの劇団テアトルハカタを4本に渡って掲載しました。
劇団テアトルハカタの記事は歴史を振り返るだけでなく、このカンパニーが目指した「舞台活動を生業にしていくこと」「地方都市において劇団を存続させること」「演劇のすそ野を広げること」を検証しています。制作面の具体的な手法も紹介し、「創客」の参考になるでしょう。
5月にはギンギラ太陽’sの前身である、劇団幻想舞台を主宰した高橋徹郎氏にロングインタビュー。数年間の活動期間ながら福岡の伝説となっているカンパニーで、その流れで両カンパニーで活躍した俳優の立石義江氏、杉山英美氏にもロングインタビューしています。現在、高橋氏は演劇活動から離れていますが、まさに「福岡の演劇シーンを振り返るときに外せない存在」で、この記事を待ち望んでいた方も多いのではないでしょうか。
立石氏が正社員を続けながら、ギンギラ太陽’sの1か月ロングランや全国ツアーも休暇で対応したエピソード、杉山氏が語るギンギラ太陽’sのパルコ劇場初日のトラブルなどは、噂では聞いていても改めて胸に迫ります。
柴山氏は紙版「休刊のお知らせ」*2 で、「N.T.R.で調査してきた福岡の演劇の歴史を本にまとめられないかと考えてきました」と書かれていました。それが形になってきたのではないでしょうか。