この記事は2015年8月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。
京都・神戸・福岡で300人動員することは東京で1,800人動員することに相当する、500人動員することは3,000人動員することに相当する(主要都市換算表あり)
上演地が異なれば人口も違うわけですから、動員数の基準も変わってきます。これは頭ではわかっていることだと思いますが、毎回数値を換算して読み替えている人は少ないのではないかと思います。
そこで、2015年7月1日現在の推計人口を使った換算表を作成してみました。推計人口とは、直近(2010年10月)の国勢調査人口(確報値)を基準とし、これに毎月の住民基本台帳等の増減数を加えて推計した人口で、各自治体がサイトで公表しているものです。
これを見ると、東京で1,000人動員することは、大阪で3,421人、札幌で4,736人、京都で6,281人、北九州で9,621人動員することに相当することがわかります(水色セル)。
札幌で1,000人以上動員する地元カンパニーは結構ありますが、これを東京で考えると5,000人動員していることに相当するわけです。やはり、札幌は演劇が盛んなのだと思います。京都で1,000人動員することが偉業と言われることも、これを見れば理解出来ます。
東京以外は動員の最初の壁が300人、次が500人と言われます。東京のカンパニーにとってはたやすく達成出来る数字かも知れませんが、それもこの表を見ると地域の実感がリアルに伝わると思います。
人口150万前後の都市にとって、動員300人は東京23区の1,800人に相当し、動員500人は3,000人に相当します(黄色セル)。東京23区で3,000人動員するのが目標であるように、地域で500人動員するのが目標であることが理解出来ると思います。
「どんなカンパニーでも東京なら3,000人動員出来る」が私の持論ですが、これらは各都市の312人(北九州)~1,210人(横浜)に相当します。人口で換算すれば、決して無理な目標でないことがわかるでしょう。
(2015年10月19日追記)
コメント欄のやりとりを踏まえ、手売りや若手の販売難易度を考慮した補正版を掲載しました。
動員の評価を考えるときに、人口比で考えるべきという指摘まったく同感です。
ちょっと補足するとすれば、これらの数字は手売りの数字をのぞいた一般のプレイガイド販売の枚数としてみるべきということくらいでしょうか。
たとえば座組10人の時の手売りできる枚数は、300枚前後で、これは東京でも人口30万人の都市でもあまり変わりません。
確かに、身内客への手売りは人口とは関係なく、どんな都市でも座組の数に比例して一定数が売れるはずだと感じます。
その一方で、京都・KAIKAが「まずは300人、お客さんを入れていただこう企画」を公募しているように、京都では300人動員出来ない若手がいるのも現実のようです。
この点についてはどうお考えでしょうか。
おっしゃるとおりで、これは、福岡も同様の現象がおこっています。
チケット価格の高騰化とノルマというある種の強制というニュアンスを持つものが忌避されていることから、動員の減少が来ていると思います。
チケット価格の高騰化は、
1)装置照明というテクニカルを外部発注するようになってきた
2)アートマネジメントの考えが進んで、赤字というリスクをとらなくなった
3)自己投資的な意味での赤字をかぶるという選択肢を取らなくなった
ことからきていると思います。
その結果、活動の規模が縮小してきているのだと思います。
これについてはとても憂慮しています。
KAIKAが企画を通じて、この風潮を変えようとしているのであれば、それは素晴らしい試みだと思います。
京都の10年前と現在で、若手カンパニーのチケット価格の相場を比較してみました。
10年前は若手カンパニーだと前売1,000円前後のところが散見されたのですが、現在は前売2,000円前後が目につきます。若手カンパニーは元々が安価なので、確かに上がったという印象があります。
物価が安い地域ほど、この影響は大きく感じるでしょうから、高崎さんの書かれている「チケットの最低価格高騰」が全国的な傾向なら、「全国どこでも手売り300名」は難しくなっているのではないでしょうか。逆に物価が安い地域ほど、手売りがしづらくなっているのではないかと思います。
そういう背景を考えると、この換算表から手売りを抜く必要は特にないのではないでしょうか。
たしかに、手売りの300人は、それなりに頑張ればという前提の数字で、中間的なところで言えば、100〜200の手売りで、実際の動員もそれとほぼ変わらないというところかと思います。
基本的な考え方には賛成ですが、10倍近い人口比がありますと、100,200,300という数字は大きく反映されます。
結果として実態とは離れた数字になるように思えるので、固定費/変動費といった考え方は必要かなと思います。
基本的な考えには賛成していることは、改めて申し上げます。
京都の例でわかるとおり、最近は若手カンパニーでチケット価格は2倍程度になっています。逆に東京は最初からそれくらいしたので、地域ほど「若手なのにチケットが高い」と感じるようになり、以前のように気安く買ってくれなくなった可能性があります。これで手売り自体の数が減ります。
これに加え、この印象は手売り・プレイガイドを問わず、その公演全体にかかってくるものなので、全体的に地域ではチケット販売が以前より難しくなってきているのではないかというのが私の考えです。関西で若手が劇場ではなくカフェ公演を多くするようになった背景も、これで理解出来ます。
そうした人口比以外の物価差・相場観という要因があることを考慮した、福岡市のシミュレーションをしてみます。
(前提条件)
手売りだけで300×2/3まで売れるはず=東京の100に相当(1.0倍)
※人口比だけの場合:603(6.03倍)
手売りだけで300×2/3まで売れるはず=東京の200に相当(1.0倍)
※人口比だけの場合:1,206(6.03倍)
(手売り300×2/3)+(プレイガイド100×難易度1.5×人口比6.03)=東京の1,105に相当(3.7倍)
※人口比だけの場合:1,809(6.03倍)
(手売り300×2/3)+(プレイガイド300×難易度1.5×人口比6.03)=東京の2,914に相当(5.8倍)
※人口比だけの場合:3,015(6.03倍)
(手売り300×2/3)+(プレイガイド800×難易度1.5×人口比6.03)=東京の7,436に相当(7.4倍)
※人口比だけの場合:6,031(6.03倍)
これがよりリアルな倍率かなと思います。