この記事は2013年7月に掲載されたものです。
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衛紀生氏が東京の民間劇場にロングランシステムを導入させる方法を掲載、年間5億円の休業補償交付で「東京の演劇環境は劇的に改善する」

in 備忘録 on 2013年7月7日

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可児市文化創造センター館長兼劇場総監督の衛紀生氏が、20年ほど前に通産省に提言した、東京の民間劇場にロングランシステムを導入させる方法を掲載しています。

東京の演劇界は新作偏重で、劇作家が多作を強いられて「消耗品」のように扱われており、舞台のクオリティが低下しかねないという前振りで、民間劇場の多い東京ではロングランシステムの導入しかないとしています。

貸館でロングランシステムを実現するには、劇場契約の終了日を未定にする必要があり、劇場側は次の予定を入れることが出来なくなります。このため、ロングラン終了から次の上演が可能になるまでの間、公的な休業補償を交付したらどうかという内容です。

通産省に提言したのは、このロングラン・システムを採用できる民間劇場を数館ピックアップして、ひとつの舞台がクローズドしたあと、次の舞台が決まり、初日が開くまでのあいだの「休業補償」に交付金を支給する、というものです。仄聞するに、紀伊国屋ホールの1日の演劇価格は40万円だそうで、次の初日が開くまで2ヶ月間空けるとなると、40万円×60日で2400万円の休業補償が支払われ、その期間は劇場文化に空白期間をつくらないために、ホールみずからが主催する講演会、落語、チャリティ音楽会など何に使用しても良いということにする、というのが私の提案でした。劇団にも、劇場にも、鑑賞者にも、都市のイメージアップにも良い、という「三方よし」ならぬ「四方よし」の施策と私は考えました。

可児市文化創造センター/館長の部屋「東京の劇場環境を変えるために―ロングランによる演劇の産業化は可能か。」

衛氏の当時の試算では、必要な予算は年間5億円とのことです。既存の民間劇場を活用する形になるため、新規の設備投資は不要で、ロングランを目指して舞台のクオリティも上がるとしています。

上演機会を増やすもう一つの方法であるレパートリーシステムについては、装置類を保管する倉庫が必要で、カンパニーが劇場を持たないと難しいとしています。この理論の裏返しで、劇場がカンパニーを付属するのはレパートリーシステムを採用しているからだとしています。

「劇場にはカンパニーが付属しているもので、そうでないのはおかしい」という言説こそ一種の虚言なのです。ごく一部の演劇関係者の私的な利害に基づいた牽強付会な空理空論なのです。

実際としては、カンパニーが付属していない方が現代では一般的なのです。イギリスでもレパートリー・システムを採用している「レップ」を名乗っている地域劇場は私の知るかぎり、スコットランドのダンディ・レップとイングランドのバーミンガム・レップしかありません。このうちバーミンガム・レップは、私が訪ねた時の話では、少数の俳優が単年度契約で所属してはいるものの、実態としてはプロデュースであると思えました。英米の地域劇場の大多数はプロデュースによって年間10本から20本程度の舞台を製作しているのが実態です。

可児市文化創造センター/館長の部屋「東京の劇場環境を変えるために―ロングランによる演劇の産業化は可能か。」

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