この記事は2013年8月に掲載されたものです。
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地域の制作者は五島朋子氏の論文でうずめ劇場の10年間を追体験しよう

in 備忘録 on 2013年8月31日

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小劇場系のカンパニー付き制作者が研究者になった代表例として、鳥取大学地域学部の五島朋子准教授がいます。北九州市を本拠にしていたうずめ劇場の制作者だった方です。

五島氏が書いた論文で興味深いのが、うずめ劇場への支援の実態を描いた「地域劇団の継続的活動へむけた支援の意義と課題 ―劇団『うずめ劇場』10年間の実践を通して―」鳥取大学地域学部紀要『地域学論集』4巻2号(2007年)でしょう。

五島氏の論文は下記からダウンロード出来ます。

鳥取大学研究成果リポジトリ「Goto Tomoko : 五島 朋子」

制作面から見たカンパニーの事情は佐藤郁哉著『現代演劇のフィールドワーク』(東京大学出版会、1999年)でも詳細に書かれていますが、五島氏の場合は地域におけるカンパニーの創生期からの10年間を時系列で描き、それぞれの時期における公演活動・受賞歴・助成金・劇評などが、カンパニーにどのような影響を与えたかを明示しているのが特徴的です。

これを制作者が読めば、自分のカンパニーの長期計画と重ね合わせ、これからなにをすべきかのヒントになると思います。特に地域に本拠を置くカンパニーにとっては、参考になる点が多いでしょう。

この論文を読んで、私が特に共感した個所をご紹介します。

  1. 2001年の在京演劇評論家による初めての劇評(内野儀氏)を、「劇団にとって画期的」と紹介していること。

    地域のカンパニーにとって、東京の評論家に劇評を書いてもらうことがいかに困難かということです。うずめ劇場主宰のペーター・ゲスナー氏は2000年の第1回利賀演出家コンクールで最優秀賞を受賞しているのですが、それくらいしないと評論家は足を運ばないということが、よく伝わります。

  2. 助成金以外の非金銭的支援においては、人脈がいかに大切かということ。

    劇場外公演では、その場所の所有者・管理者とのコミュニケーション能力が問われます。レジデンス施設として提供された邸宅の所有者が、かつて演劇青年だったというエピソードには、探せば同じようなチャンスがもっとあるのではないかと感じます。*1 支援の決め手はゲスナー氏の「気迫と情熱」に依るところが大きかったようで、アーティスト本人の熱意がいかに重要かがわかります。

ゲスナー氏が07年から調布市せんがわ劇場芸術監督と桐朋学園芸術短期大学演劇専攻科准教授に就任したのに伴い、うずめ劇場の本拠は東京に移って地域劇団とは呼べなくなりました。*2 この論文が書かれたのが07年5月で、本当はこの内容のあとに最大の転換期を迎えたわけですが、そうした展開も含めて考えさせられるでしょう。

制作者として、こうした他カンパニーの長期間の記録を読んで追体験し、「自分だったらどうするか」を考えるのは非常に勉強になると思います。テキストとなる記録も増えてきました。先達の貴重な経験を活かしてください。

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  1. 日経新聞などで企業経営者が元演劇青年と紹介されていると、制作者たちはこの情報を知っているのだろうかとよく思います。 []
  2. 調布市せんがわ劇場は11年3月で退任、桐朋学園は13年から教授に就任。 []

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