この記事は2015年7月に掲載されたものです。
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演劇制作者にこそ読んでもらいたい『漫画編集者』
話題になっている『漫画編集者』(フィルムアート社)を読みました。幅広い世代・ジャンルの漫画編集者5名へのロングインタビューで、担当作家の描き下ろし特別マンガ「私の担当編集者」も収録されています。
アーティストと伴走する職能の中でも、漫画編集者はその密度が非常に濃いことで知られていますが、本書でも詳細が伝わる記述が随所に見られます。演劇では、この領域でドラマトゥルクという肩書が使われるようになってきましたが、元々制作者にはドラマトゥルクの要素は含まれているはず。専任ドラマトゥルクが活躍するのはいいことですが、それ以外の制作者も「制作者は元々ドラマトゥルクなのだ」という意識を持ち、活躍していただきたいと思います。
漫画編集者は大手出版社であっても業務内容があまり専門化されず、なんでもこなすところも印象的でした。いま、制作者の労働環境整備が叫ばれ、その実現を目指す中間支援団体の活動も始まりましたが、組織の充実と個人の自由はトレードオフの関係にあります。組織の中で漫画編集者のような自由度をキープ出来るかは、舞台制作の世界でも重要な課題として認識すべきだろうと思います。これはモチベーションの根幹に関わることなので。
演劇の世界では、欧米の劇場システムを先進事例とする考え方が根強いようですが、日本には世界に誇るマンガ・アニメの文化があり、そうした他ジャンルもぜひ参考にしてほしいと思います。10年前にfringe blogで「学芸(ドラマトゥルク)はアニメに学べ」というアーティクルを書きましたが、いま読み返しても思いは変わりません。
演劇だから外国の演劇に学ぶのではなく、日本独自の文化にも学び、両者の優れたところをハイブリットすればいいと思います。
フィルムアート社
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