この記事は2017年2月に掲載されたものです。
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なぜ制作志望者は少ないのか、それに対してどうしたらいいのか
専任の制作者が少ないアンケート結果から、そもそも制作志望者がなぜ少ないのかを考えたツイートをまとめておきます。
【専属の制作者がいますか?】
私も元制作者なんでそれに関連したツイートをすることが多いのですが、そもそも制作者がいない劇団も多いですよね。制作者不在の劇団がどの程度の割合なのかざっくりと把握したく、アンケートを実施してみます。宜しければご協力のほどを。— 星英一 (@hoshi_a1) 2017年1月22日
なぜ、制作者は少ないのだろう。待遇等の問題とは別に、志望者が俳優より少なすぎないか。スタッフ志向の人にとっては魅力的なはずだが、そんな人はそもそも演劇に興味がないのか。演劇=俳優と思われているのか。役割とモチベーションのギャップを修正していかないと、制作者は増えないのではないか。
— fringe (@fringejp) 2017年1月30日
私は、演劇の制作を担当することの魅力が、上手く伝わっていないのだと感じる。不毛なことを制作担当に押し付ける劇団やプロデュース公演が沢山ある事実も見逃せないと思う。 https://t.co/jKux4KQ8Vd
— 小野寺誠 (@media_mac) 2017年1月30日
そもそも「制作」という仕事の存在が見えにくく、なにをやってるひとなのかわからないからというのが私の中では有力です。ほかのセクションは具体的な創作とのつながりが想像しやすいけれど、制作は名称からしてなにやってるひとなのか伝わりにくいですし。 https://t.co/8kmtjRsfGc
— 大森晴香 (@haruharuharu306) 2017年1月30日
@fringejp 食べていく道筋、目指すべきビジョンが見えないからだと思います。役者なら売れてドラマや映画に出て食べていけそう。音響や照明、舞台監督もその道で有名な人がいて、「何をしている人か」分かる。制作で「その道で有名で」「何をしているか分かる人」をすぐに思いつけません。
— いっこ (@murasakicco) 2017年1月30日
達成感が薄く見えているのではないか。仲間からでさえも。 https://t.co/1FECyYAS7N
— 植田良子 (@ryo____u) 2017年1月30日
需要の問題も指摘されましたが、需要とは別に、「制作者になりたい」「制作者に憧れる」人が少ないことが不思議なのです。俳優になりたい人はいくらでもいるし、劇作家・演出家になりたい人は少なくともカンパニーの数だけいるのに、なぜ制作者になりたい人がカンパニーの数だけいないのか。
仕事としての需要の問題は確かにあると思いますが、それ以前に制作者になりたい人が少なすぎるように思えるのです。 https://t.co/OTh0DKeOfZ
— fringe (@fringejp) 2017年1月30日
だったら、いま出来ることを考えてみましょう。
制作志望者が少なすぎる件。まずは制作という役割、必要性の周知からだろう。演劇の入門書を見ても、制作者のことを書いているものがほとんどない。文芸・俳優・技術と同じ並びで制作が書かれないと話にならない。制作者が対象となる演劇賞も少ない。これでは、いてもいなくても同じと思われるだろう。
— fringe (@fringejp) 2017年2月2日
制作志望者が少なすぎる件。道筋が見えない点は、ロールモデルを紹介するしかない。確かに、制作者の略歴を一覧出来る資料はないと思う。例えばON-PAMの会員名簿 https://t.co/d8jsWkN1h1 にプロフィールがあるとよい。制作者を増やすことも重要なミッションだと思う。
— fringe (@fringejp) 2017年2月2日
星英一氏が書かれているように制作領域は広く、全部が得意な人はいない。以前は「動員が少ない団体をなんとかしたい」との思いで関わる人が多く、制作者=広報宣伝が得意だったが、現在はドラマトゥルクや運営志望者も増え、ミスマッチが起きやすい。https://t.co/W1hVSQ9y9w
— fringe (@fringejp) 2017年2月4日
そう考えると、「制作者募集」と書くより、自分たちの弱い領域に限定した募集をかけたほうがいい。評価は高いのに動員が伸びないなら、「広報宣伝担当募集」にするのだ。これならミスマッチを防げるし、専門知識を活かして無報酬で協力してくれる人もいるだろう(領域限定なら本業と両立出来るので)。
— fringe (@fringejp) 2017年2月4日
この流れが進むと、各制作者の得意領域が公開状態になり、そのスキルを求める他団体の制作者同士がチーム化され、最終的には団体を超えた制作会社になっていくだろう。現在は当日運営の領域で近いことが行なわれているが、それを全領域に広げ、制作者は自分の得意領域を専門に担当するという考え方だ。
— fringe (@fringejp) 2017年2月4日
制作者が食べていくことを考えると、複数の制作者がチームをつくって得意領域を分担し、複数のカンパニーを同時に手掛けることが最も合理的です。この考え方自体は90年代からありますが、まだ大きな流れにはなっていないと思います。公共ホールなど制作者の活躍の場が増えたのが要因だと考えますが、ネットの普及や趣味の多様化で、逆にいまこそ制作者の専門化が求められているような気がします。
ビジョンが見えない点に対しては、未知数のカンパニーに人生を懸けられないのは当然で、創生期の若手を支援する別の仕組みが必要だろうと考えました。公共ホールがこうした役割を果たすケースも増えてきましたが、もっと普通に働きながらアマチュアからプロフェッショナルへの飛躍を手伝えるスキームが生まれないだろうか、と思いました。
まだ妄想レベルだが、世の中で副業解禁が進むと、演劇好きの社会人が堂々と制作会社を兼業し、専門分野で支援することが可能になるのではないか。例えば企業の経理マンが会計を担当したり、営業マンが売り込みをする。副業なのでフィーを抑え、予算のない若手カンパニーでも委託出来る仕組みをつくる。
— fringe (@fringejp) 2017年2月5日
創生期の若手でも、チケットを売って観客を呼ばなければならないのが演劇だ。予算や経験がないのに、最初から興行面を充実させなければならない矛盾への解決策の一つが、副業による社会人の支援ではないかと思った。専業の制作者は、より高いレイヤーでプロのカンパニーを支えることで棲み分けを図る。
— fringe (@fringejp) 2017年2月5日
もちろん、制作者は重要なクリエイターで、専業の制作者が演劇の未来を創ると信じているが、それとは別にアマチュアの公演を経てプロ化していく日本の環境では、途中段階を支える仕組みが必要だと思う。無償で支えてくれる劇団員制作者がいないのなら、こうした新しい発想の支援があってもいいのでは。
— fringe (@fringejp) 2017年2月5日
正当なフィーの発生しないところに責任は生まれないとの意見もありましたが、創生期の芸術と対価は折り合わないものです。そこに興行という矛盾が加わったのが舞台芸術で、だったらその価値観を逆転させるスキームをつくればいい、というのがこの提案です。