この記事は2016年11月に掲載されたものです。
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映画『この世界の片隅に』のクラウドファンディングを見て、演劇は「前売券=才能を信じること」に出来ないかと思った
映画『この世界の片隅に』(原作/こうの史代、監督/片渕須直)を観ました。私は1988年の『火垂るの墓』『となりのトトロ』2本立てをロードショーで観ましたが、そのときの感動に近いものを感じています。2作品を同時に観て伝わるものが、『この世界の片隅に』に込められていると思いました。それも、これまでにない手法で。
大手ではない東京テアトル配給のためスクリーン数が少なく、主演の声優を務めるのん氏(本名・能年玲奈)の事情でマスコミの扱いも限られているようですが、この素晴らしい作品がヒットすることを願っています。新谷真弓氏(ナイロン100℃)も重要な役で、舞台となった広島出身のため、全配役の広島弁ガイド収録を担当しています。日本の映画史に残る傑作を、ぜひ映画館でご覧ください。
『この世界の片隅に』はクラウドファンディングの「Makuake」で3,374人から3,912万円を集め、パイロットフィルム制作や出資先への説得材料となりました。1万円以上の支援者がエンドロールでクレジットされる様は、まさに感動です。この映画がクラウドファンディングを一般に広め、しいては日本に寄付文化を根付かせるきっかけにならないかと思います。
このクラウドファンディグで思ったのは、演劇の前売とはなんだろうということです。まだ形になっていない演劇の前売とは、相手のことを知り、その才能を信じることではないかと思いました。だとしたら、演劇を宣伝して前売券を買ってもらうということは、クラウドファンディグと同じ姿勢で臨むことが必要になるのではないでしょうか。そのツイートを再録しておきます。
映画『この世界の片隅に』。クラウドファンディング1万円以上でエンドロールに名前がクレジット。本編の感動に続き、これこそ最高のリターンだと感動。愛する作品にクレジットされるのは映画ファンの夢。同じレベルのリターンを演劇は考えられるか。https://t.co/dbMYW6JzVA
— fringe (@fringejp) 2016年11月19日
作品がどうなるか全く不明な段階からチケットを売る演劇は、前売券自体がクラウドファンディングに近い性質かも知れない。だとすれば、中途半端な内容より作・演出の実績を詳細に紹介し、信頼出来る才能であることを訴えることが、正しい宣伝に思えてきた。「前売券=才能を信じること」に出来ないか。
— fringe (@fringejp) 2016年11月19日
作・演出の実績と照らし合わせて観るべき作品かどうかを吟味する作業は、演劇ファンなら誰でも脳内でやっているが、それをわかりやすく可視化すれば、初見の観客にも期待してもらえるかも知れない。多くの演劇チラシに欠けている要素がまさにこれだと思う。情報を持たない観客に信頼されていないのだ。
— fringe (@fringejp) 2016年11月19日
初見の観客から信頼を得るだけの情報を記載すること。そう考えると演劇の宣伝とは、今回の作品だけでなく作・演出やカンパニーの演劇人生そのものを紹介すべきで、クラウドファンディングの募集記事と全く同じ。この観点でデザインすれば、チラシのフォーマットや配付方法も大きく変わるのではないか。
— fringe (@fringejp) 2016年11月19日