この記事は2013年3月に掲載されたものです。
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ナカタアカネ作品を巡って第19回OMS戯曲賞選考経過と選評が異例の展開

in 備忘録 on 2013年3月30日

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稲田真理+土橋淳志著『OMS戯曲賞Vol.19』(大阪ガスビジネスクリエイト内OMS戯曲賞事務局、2013年)

3月15日に発行された『OMS戯曲賞Vol.19』(大阪ガスビジネスクリエイト内OMS戯曲賞事務局)に収録された、第19回OMS戯曲賞の選考経過と選評に注目しました。大阪ガスビジネスクリエイトサイトで全文公開されています。

最終選考に残ったナカタアカネ氏『物語と愛情』(トランスパンダ上演台本)に、選考委員の渡辺えり氏から異議があり、選考後に書かれた選評でも、渡辺氏はかなりの行数を割いて触れています。

渡辺氏はスケジュールの都合で最終選考会を欠席したため、事前に司会の小堀純氏と岡野宏文氏が面談して意見を聞きました。その中でナカタ作品に対する異議のコメントがあり、最終選考会で作品の評価が定まってからメモを配布したそうです(このため評価には影響していません)。九鬼葉子氏による選考経過にはこう書かれています。

 最後に、ナカタ作品について。この作品については、所見ではなく、異議があった。かつて渡辺氏が関西の女性劇作家の作品を一人芝居として上演した際の、渡辺氏とナカタのやりとりが引用されており「私とやりとりした言葉をギャグにして織り込んだりして、本当にひどい。私の意図を曲解して書いている。傷つきました」。付け加えて「もう少しおもしろければ、見方も変わったかもしれないが」という言葉もあった。

九鬼葉子「第19回OMS戯曲賞選考経過」
稲田真理+土橋淳志著『OMS戯曲賞Vol.19』(大阪ガスビジネスクリエイト内OMS戯曲賞事務局、2013年)所収

これは、2010年8月に上演されたユニットえりすぐり『乙女の祈り』を指しているのでしょう。東京、大阪、山形の3都市公演された渡辺氏初の一人芝居で、当初はナカタ氏も含めた関西の注目女性劇作家5名が予告されていましたが、最終的には大きな入れ替えがありました。創作を巡る相当なやりとりがあったのだろうと推測します。

選考経過で九鬼氏は劇作家の必然と覚悟について説き、渡辺氏も選評で一人芝居の企画意図にまで遡って嘆いています。こうした戯曲賞の選評では、異例の展開と言えるでしょう。

もちろん、ナカタ氏も渡辺氏が選考委員であることをわかって応募しているわけで、完全な確信犯のはず。というか、OMS戯曲賞関係者全員、確信犯だとわかって最終選考に残しているのでしょう。その意味で、OMS戯曲賞事務局のしたたかさを感じました。

もし、渡辺氏の二人芝居(サンサル・プロデュース『花』)に戯曲提供の経験がある土田英生氏が選考委員だったら、なんと言うでしょうね。

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