この記事は2013年6月に掲載されたものです。
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フロントスタッフを「当日制作」と呼ぶのは用語としておかしいが、プライドを持たせる肩書を用意するのは大事だと思う――例えば「レセプショニスト」とか

in 備忘録 on 2013年6月27日

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公演期間中のフロントスタッフを、最近は「当日制作」と呼ぶそうですが、これについて少年社中制作の一ツ橋美和氏が疑問を呈しています。

私の意見を書きますと、まず「当日制作」を「当制」と略すのはやめるべきでしょう。「当日精算」の「当精」と同じ発音(とうせい)になり、現場で混乱する可能性があるからです。

次に、「当日制作」という肩書の是非ですが、「制作」という用語は制作業務全体を指し、そこから特定領域を専門特化させた場合は、その領域名で呼ぶのが普通だと思います。

(専門領域の例)
事務処理を専門に担当 ⇒ デスク
広報宣伝を専門に担当 ⇒ 広報宣伝
票券管理を専門に担当 ⇒ 票券管理
食事手配を専門に担当 ⇒ ケータリング

そうなると、フロントスタッフは当日運営を専門に担当するので、「当日制作」ではなく、「当日運営」などの領域名で呼ぶべきではないでしょうか。ボランティアのお手伝いさんなら、「運営協力」がふさわしいのではないかと思います。

制作業務全体を表わす「制作」に、限定を表わす「当日」を組み合わせるのは、用語として違和感があります。Twitterで「当日制作」は「一日警察署長」みたいだという意見がありましたが、私も同感です。一日だけの「署長」が本来あり得ないように、当日だけの「制作」もあり得ません。時間で区切るのではなく、領域で区切るべきです。そのほうが専門性が強調され、フロントスタッフの自覚も増すと思います。

誤解のないよう書いておきますが、フロントスタッフは観客と接する重要な役割で、高い専門性が要求されます。とても責任のある業務だと思います。だからこそ、専門領域の名前で呼んで、自分の役割を意識してほしいのです。

例えば、コンサートホールで専門職として確立している「レセプショニスト」を演劇界に広めてもいいかも知れません。肩書が人を育てる効果もあると思います。

なお、旅公演では「現地制作」というクレジットがありますが、この場合はツアー先での劇場契約、広報宣伝、票券管理なども担当します。このように、準備期間から制作業務全体を担当するのが「制作」だと思います。

(2013年6月28日追記)

「レセプショニスト」が、公演期間中に劇場で行なわれる制作業務全体と受け取られるとのご指摘がありましたので、追記します。

私は、受付業務は元々内部の制作者・票券管理が担当すべきものだと思っています。従って、公演当日だけ応援に来る外部スタッフが、受付業務を担当することは想定していません。受付業務を「当日制作」にお願いしないといけないとしたら、そのこと自体が疑問です。

こうした前提の下に、ロビーでの接遇領域(もぎり、パンフ渡し、クローク、誘導、場外・場内整理、物販など)を担当するフロントスタッフを専門特化させた場合の名称として、例えば「レセプショニスト」があるのではないかという意味で書きました。

「レセプショニスト」=公演期間中の制作という意味ではありませんので、誤解のないようにお願いします。

3 thoughts on “フロントスタッフを「当日制作」と呼ぶのは用語としておかしいが、プライドを持たせる肩書を用意するのは大事だと思う――例えば「レセプショニスト」とか

  1. よこたたかお
    1

    こんにちは。よこたです。先日、ツイッター上で、少し(だけ)話題になった、当日制作の名称について、レセプショニストの多和田さんからの提案と、僕の問題整理が、読まれているのか少し不安なので、こちらのコメント欄に同様のものを残しておきます。
    ※ちなみに、ツイッターの「まとめ」とか、使い方が良くわからないのと、それと作ったところで荻野さんが読むかどうかは別問題なので、やはり、fringeのサイトに書き込んでおいた方が後々、議論に参加したい人にとっても有意義だろうと思うので、以下、ツイッターと同じものをコピペしておきます。
    2013/07/05よこたたかお

    よこた私見(0):(えと、ツイッターの使い方が良くわかっていないので、これを@ナシで書いても、荻野さんと多和田さんが同時に読んでくれるのか分からないのですが、一応、@ナシでコメントしておきます。)
    よこた私見(1):まあ、何故か多和田さんも荻野さんも「感情論」になってしまって、お互いに議論を譲る姿勢を見せないのが不思議でならないわけですが(笑)、昨日に議論を整理したつもりなので、ちょっと改めて問題をさらいます。ちなみに、僕は意見を特にしませんので。
    よこた私見(2):多和田さんの「怒り」は、実際に「レセプショニスト」として仕事をしている身から出ている発言で、荻野さんのものは、仮に現場で採用されたとしても職能としては認知されない話である、という点で、お二人の議論は食い違っています。
    よこた私見(3):問題を職能に絞れば、荻野さんの提案である「レセプショニスト」としての自覚は、(これまでの)「当日制作」の労働力をむやみに搾取する危険性があって、多和田さんの立場からすれば、それは職位の無闇な価値の切り下げにあたってしまうわけです。
    よこた私見(4):荻野さんの提案する、受け付け業務に対する「自覚」は、職能の水準まで必要とされているわけではなく、単に「自覚」してほしいという願いであって、決して多和田さんのような仕事としての「レセプショニスト」のレベルを要求していないでしょう。
    よこた私見(5):だから、単なる名称だけの問題で、現場レベルではじゃんけんで決めればいいでしょ、という疑問が出てくるのも当然の話で、「名称」だけの問題ならば小劇場の現場の内輪で終わりますが、仕事にしている人からすると、不当な価値の切り下げに当たるわけです。
    よこた私見(6):とりあえず、議論の上では、「名称を与えることでスタッフに業務範囲を自覚させる」という立場と、「名称に見合う労働力を提供するならば、同時にそれに見合う報酬も必要である」という立場が対立していて、この両者が相容れるはずはないでしょう。
    よこた私見(7):はい。以上、とりあえず、僕の意見を述べました。って、これ、@つけなくてもいいの?よくわからん。はい。

  2. 荻野 達也
    2

    肩書と実際の職能が一致していない場合、評価が下がるのはその個人であって、肩書自体が貶められるわけではないというのが、私の考えです。「ピアニスト」は誰でも名乗れますが、その人が本当に「ピアニスト」に値するかどうか決めるのは周囲です。それと同じことです。

    > 荻野さんの提案する、受け付け業務に対する「自覚」は、職能の水準まで必要とされているわけではなく、単に「自覚」してほしいという願いであって、

    まず、私は受付業務は内部の制作者・票券管理が担当すべきと追記で書いています。「レセプショニスト」はロビーでの接遇領域に限定しています。

    次に、肩書を名乗ることは当然職能の水準まで要求されると思っています。「自覚」して、その職能を発揮してほしいわけです。「自覚」だけでいいとは全く思っていません。肩書を名乗るからには、それにふさわしい職能を発揮する「義務」があると考えます。

    職能を果たさなければ、当然周囲から肩書との乖離を批判されるでしょうから、本人が恥ずかしくなって肩書を取り下げるでしょう。批判されるのは本人であって、肩書とその職能の価値が下がるわけではありません。

    資格試験が必要なものでない限り、肩書は誰でも名乗れます。「プロデューサー」という肩書も、経験を積んだ人材しか名乗れない現場もあれば、学生が名乗っている現場もあります。けれど、それ自体は仕方のないことで、大切なのはその肩書にふさわしい職能を発揮しているかという周囲の評価でしょう。

    「レセプショニスト」もサービス業全般で広く使われているのが実態です。肩書が一人歩きするのは防げないわけで、その肩書に恥じない振る舞いをするよう、各自で努力するしかないと思っています。

    • よこたたかお
      3

      すいません、返信が遅れました。
      コメント、ありがとうございます。
      なるほど、分かりました。まあ、ここにかみついているのは僕ではないので(笑)、一旦これで、僕からの提案は止めておきます。