私が宣伝美術ワークショップで新築分譲マンションのサイトを見ることを勧めたわけ

in TIPS on 2015年4月19日

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制作者向けの宣伝美術ワークショップなどで、私は近所の新築分譲マンションのサイトを見ることを勧めてきました。不動産の広告など、関心がなければ普通は見ないものですが、舞台芸術の制作者には学ぶべき点があると思ったからです。

人生最大の買い物は家であるとよく言われますが、新築分譲マンションや一戸建ては完成前に「青田売り」されることが多く、実際の商品がない状態でいかに魅力を伝えるかが重要になります。特にマンションは詳しい物件サイトを開設するため、自分がよく知っている地元の物件を見れば、デベロッパーが魅力をどう伝えようとしているかがよくわかります。

不動産の場合、いちばん重要なのは立地です。人気がある場所ならキャッチコピーも簡単ですが、それ以外のロケーションになると、デベロッパーも知恵を振り絞ってコピーを考えています。そういう物件のサイトをぜひ見てください。「その手があったか」「この場所をこんな風に紹介するんだ」と驚くような表現が満載のはずです。

舞台芸術も、新作なら完成前に「青田売り」しなければならない点は同じです。マンションは建築物ですから、詳細な設計図に基づいた完成パースやモデルルームがありますが、現物がない状態でいかに買い手のイメージを掻き立て、魅力ある商品に思わせるかという点では、考え方は全く同じです。

演劇の場合、キャッチコピーが書かれていない作品も多いですが、人を動かすための惹句は必須だと思います。しかし、宣伝材料を制作する時点で作品の詳細が決まっていないことも多いでしょう。そんなとき、新築分譲マンションのサイトは発想の転換になります。

例えば、ありふれた立地のマンションだと、下記のようなキャッチコピーが添えられることがよくあります。

そこには、あなたが知らない●●があります。

●●には地名が入ります。ありふれた場所かも知れないけれど、この物件は特別だということを訴えたいのでしょう。これは●●を劇場名にしても成立すると思いませんか。その劇場では多数の作品が上演されているが、自分たちの作品が別格だと思うなら、●●を劇場名にしたキャッチコピーもありでしょう。

物件そのもので差別化出来ない場合、新しい暮らしを手に入れませんか、というライフスタイル提案型の宣伝もマンションでは普通です。この考え方は演劇にも使えるはずです。芝居の内容を宣伝するのではなく、芝居の前売券を買うこと自体を楽しもうよ、と訴えるのです。例えば、こんな感じです。

この芝居のチケットを買ってから、上演日が待ち遠しくなりました。

ライフスタイル提案型の宣伝は、支援会員募集やロングラン公演では見掛けますが、作品の詳細が決まっていないなら、普通の公演でも活用したらいいのではないでしょうか。

新築分譲マンションのサイトは、こういうことも教えてくれるのです。人生最大の買い物でいかに人の心をつかむのか。勉強になりますよ。

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