この記事は2021年3月に掲載されたものです。
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作品世界から妄想した料理を提示するEPADポータルサイト「ごっこめし」に魅せられる
「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター支援事業」(EPAD、Emergency Performing arts Archive + Digital theatre)で対を成す、EPADポータルサイトと早稲田大学演劇博物館「Japan Digital Theatre Archives」(JDTA)。このうち、EPADポータルサイトはデジタルアーカイブの楽しみ方を紹介する機能も持っていますが、「よみもの」メニューに連載されている「ごっこめし」がユニークなのでご紹介します。
「ごっこめし」とは、作品から妄想した料理をごっこ遊びのように作って食べる企画です。
とあるように、過去の上演作品をモチーフに実際の料理をつくり、写真・テキストと共に紹介するコンテンツです。すべて土谷朋子氏(citron works)が一人で手掛けられています。
土谷氏と言えば、ハイバイを筆頭に多数の人気カンパニーの宣伝美術で知られますが、俳優でもあり、イラスト、料理、お菓子、手芸などでも活躍されています。そうしたマルチな才能を存分に活かした企画です。演劇作品をモチーフに全く別の創作をするのは、劇場併設のカフェがコラボレーションメニューを提供する例はありますが、それ以外はあまり思い浮かびません。公演を観ていない方にも興味を持ってもらえる切り口が必要なので、妄想が広がる新たなテキストと共に料理をつくるというのは、ありそうでなかった手だと思いました。
EPAD事務局には土谷氏と仕事をしてきた制作者の方もいます。土谷氏の才能と、普段制作者がやりたくても出来ないコンテンツの広がりがうまく具現化した、とても素敵な企画だと思います。
EPADポータルサイト/よみもの「ごっこめし」
#1/ハイバイ『ある女』(目玉付き焼きそばとみそ汁)
#2/ヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』(僕たちの串カツ)
#3/あやめ十八番『江戸系 宵蛍』(水羊羹「宵蛍」)
#4/オフィス鹿『山犬』(ザ・カレーライス)
個人的には、作品には一切登場しないのに、その本質を踏まえて水羊羹という世界に昇華させたあやめ十八番『江戸系 宵蛍』が特に印象的です。
このコンテンツから、逆にモチーフの元となった演劇作品に興味を持つ方が増えることを願っています。
(参考)
fringe blog「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター支援事業「Japan Digital Theatre Archives」(JDTA)公開」