この記事は2013年5月に掲載されたものです。
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「完成度が高い」という評価の指標になるのが、サイモン・マクバーニー演出『春琴 Shun-kin』だと思う
サイモン・マクバーニー演出の世田谷パブリックシアター+コンプリシテ『春琴 Shun-kin』が2013年8月1日~10日に上演されます。初演が08年で、09年再演、10年再々演で、今回が4演目になります。短期間にこれだけ再演されることはめずらしく、この作品の完成度がいかに高いかを物語っています。
そう、この作品は本当に完成度が高いのです。谷崎潤一郎の複数のテキストをモチーフとし、そこから生まれるイメージを演劇的手法で幻想的に描いたらこうなるという、まさにお手本のような演出なのです。しかも大掛かりな舞台装置などではなく、小劇場でも使える技法です。
俳句の世界では、そこで使われている言葉が他の言葉で置き換えられないかを徹底的に吟味し、この言葉しかないものを選び抜きます。これを言葉が「動かない」と言いますが、演劇の世界で例えてみると、『春琴』はシーンよりもっと短い一瞬一瞬のカットが「動かない」のです。私も長いあいだ演劇を観ていて、シーンが「動かない」と感じた作品はたくさんありますが、カットのレベルで「動かない」と感じた作品は、この『春琴』ぐらいです。
作品全体の好みは人それぞれだと思いますが、「完成度が高い」「動かない」とはどういうことかを体感するための、指標になる作品だと思います。仮チラシに「今回が最後の世界ツアー」と書かれていますので、これを逃すと当分観ることが出来ないと思います。
ライブで上演される演劇は、公演前に自信を持って薦めることが難しいのですが、4演目となる本作品は明確に書いておきましょう。演劇に関わる方で未見の方がいたら、旅費をかけてでも観るべき作品です。5月25日前売開始です。