全国紙2023年演劇回顧記事URL
コロナ禍が終息してミュージカルは活況を呈していますが、小劇場演劇は観客が思ったように戻らず、経営の厳しさに直面した2023年。ハラスメントの問題は待ったなしとなり、新劇と小劇場演劇を長年支えてきた俳優座劇場、こまばアゴラ劇場の閉館が発表されました。世界で戦火が拡大している現実の下、今年の演劇回顧記事が出揃いました。
全紙が特筆したのは名取事務所『占領の囚人たち』。生田みゆき演出で続いているパレスチナ演劇上演シリーズ最新作を、朝日の増田愛子記者は「観客に自ら考える余白を残す構造が印象に残る」と評価しています。日経は名取事務所のカナダ演劇書き下ろし上演も快挙としています。毎日・読売は生田氏の理性的な変人たち『海戦2023』なども挙げ、読売は他の女性演出家の名前と共に「男性優位だった演劇界も地殻変動」としました。
社会の分断、他者との新しい関係を描いた作品に注目が集まり、その文脈で朝日はチェルフィッチュ『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』、木ノ下歌舞伎『勧進帳』、OiBokkeShi『レクリエーション葬』を挙げました。毎日は新国立劇場『エンジェルス・イン・アメリカ』、読売はほろびて『あでな//いある』、日経はイキウメ『人魂を届けに』を紹介しました。拉致問題とAIに挑んだNODA・MAP『兎、波を走る』は、毎日・読売・日経が挙げています。
ハラスメント問題は読売が冒頭に紙幅を割き、宝塚歌劇団は全紙、旧ジャニーズ事務所は朝日・読売・日経が記しています。読売は「長年強固なファン層に支えられた巨大組織のひずみも浮かび上がった」、日経は「過剰な心身への負担を避けながら、良作を生み出していくために、適正な環境づくりを目指すべき時が来ている」と解説しています。
俳優座劇場の閉館は全紙、こまばアゴラ劇場の閉館は朝日・毎日・読売が取り上げました。関連して公共ホールの芸術監督世代交代も紹介されていますが、日経は「(公共ホールは)集団芸術として時間をかけて練り上げる労作が総じて乏しい」と苦言を呈しています。
小劇場系の若手では、朝日「私の3点」で徳永京子氏(演劇ジャーナリスト)がコンプソンズ『愛について語るときは静かにしてくれ』、読売がEPOCH MAN『我ら宇宙の塵』、読売・日経が加藤拓也氏の演出を挙げました。コロナ禍の終息で復活した海外との交流、来日公演もトピックでした。
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朝日新聞 ※要会員登録
朝日新聞デジタル「(回顧2023)現代演劇 演じることの本質、つながる『他者』と『私』」 - 毎日新聞 ※要会員登録
毎日新聞ニュースサイト「この1年:現代演劇 戦火や分断、舞台に投影」 - 読売新聞 ※ネット未掲載
「[回顧2023]演劇 巨大・人気2組織 ひずみ露呈」(東京本社版12月19日付夕刊) - 産経新聞 ※12月30日現在、ネット未掲載
※12月30日現在、産経新聞本紙にも掲載されていません。 - 日本経済新聞 ※要無料会員登録
日経電子版「〈回顧2023〉演劇・伝統芸能 絶望描き再生を模索 創作の環境づくり課題」