この記事は2017年10月に掲載されたものです。
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現役の銭湯を使ったシアターキューブリックの名企画が7年ぶりに復活、街のサロンだった銭湯文化と創客が合致した下町ならではの公演
2010年の初演時に素晴らしい企画だと思ったシアターキューブリック『曳舟湯の怪人』が、『寺島浴場の怪人』として9月30日~10月11日に改訂再演されています。
東京の銭湯を会場にした公演としては、劇団第七病棟『オルゴールの墓』(1992年、台東区谷中・柏湯跡、現・SCAI THE BATHHOUSE)が有名ですが、シアターキューブリックは現役の銭湯を営業時間外に使用するものです。初演の曳舟湯(墨田区曳舟)はマチネと定休日、今回はマチネでの上演となります。惜しくも曳舟湯は12年に廃業しましたが、建設が進む東京スカイツリーの地元での公演は大きな話題となりました。今回の寺島浴場(墨田区東向島)は隣駅で、シアターキューブリックの所在地です。まさに地元での上演です。
本公演は、墨田区が16年から開始したアートプロジェクト「隅田川 森羅万象 墨に夢」参加作品で、公募により40企画から採択された17企画の一つです。シアターキューブリックと同実行委員会が主催、墨田区と墨田区文化振興財団が共催、アサヒグループホールディングスが特別協賛し、選考委員にはセゾン文化財団プログラム・ディレクターの久野敦子氏ら演劇に理解のあるメンバーが揃っています。昨年の演劇企画では、オルタナティブスペース「あをば荘」を拠点にする絶区シアターが、隅田川岸・東白鬚公園での野外劇『水神の森 眞夏の夜の夢』で採択されています。
公演に先立ち、9月22日には寺島浴場を使った記者発表と公開稽古を行なうなど、話題づくりも事欠きません。初日に合わせて朝日新聞都内版も大きく紹介しました。
プレスリリース「【記者発表・公開稽古のご案内】シアターキューブリック湯らめき銭湯シアターver.2『寺島浴場の怪人』」(ValuePress!)
下町の銭湯を劇場とした演劇の公演が9月30日から、墨田区東向島6丁目の寺島浴場で始まります。意外な場所での上演には、演劇の楽しさをアピールするとともに、街や銭湯の魅力を掘り起こすねらいもあるようです。#演劇 #銭湯 #墨田区 #下町 https://t.co/1YEBA7kIn7
— 朝日新聞東京総局 (@asahi_edo) 2017年9月30日
そもそも銭湯は、家庭に内風呂が普及するまで街のサロンのような存在で、脱衣所や浴場を使った寄席、上映会、コンサートなどが開かれてきました。この作品は女湯の浴場が舞台と客席で、終演後の入浴券付き販売(+400円)や、東向島界隈を探訪する開演前のまちあるき(別途1,000円、保険料・入浴料込)が用意されているのも魅力です。上演時間も約50分と短めで、未就学児も4歳以上なら無料で入場出来ます(保護者のひざの上で観劇)。初めて演劇に触れる場として、そして銭湯文化を継承していくためにも、下町ならではの名企画と言えるのではないでしょうか。
初演時から「湯らめき銭湯シアターvol.1」と謳っていた企画ですから、きっとカンパニー側も継続したかったはず。墨田区の名物として続いてほしいものです。