全国紙2024年演劇回顧記事URL
築地小劇場の開場100年という節目を迎え、新劇の意欲作が目立った2024年。創立80周年の俳優座『野がも』は全紙が、創立70周年の青年座『ケエツブロウよ―伊藤野枝ただいま帰省中』は毎日・読売・日経が挙げました。一方で、日経は「新劇は観客の発掘が急がれる」と記しています。築地小劇場開館直後に上演されたカレル・チャペック戯曲を、ノゾエ征爾氏が潤色・演出した世田谷パブリックシアター『ロボット』は読売が注目。
これまでにない海外展開として、ロンドンでの各公演も紹介。ウエストエンドでの東宝『千と千尋の神隠し』長期公演、長崎への原爆投下をテーマにしたNODA・MAP『正三角関係』のほか、読売・日経は梅田芸術劇場による加藤拓也氏、兼島拓也氏の書き下ろし公演を特筆しました。日経は「海外スタッフの力を借りたクリエーター育成という点でも注目されよう」と高く評価しています。
公共ホールの活動は全紙が触れていますが、中でもKAAT神奈川芸術劇場が英国のVanishing Pointと組んだ国際共同制作『品川猿の告白』は、朝日・毎日・日経が挙げました。新国立劇場に厳しかった日経の内田洋一編集委員も、「小川絵梨子芸術監督の持ち味が出始め、(中略)存在感を示した」としています。朝日は増田愛子記者が伊丹AI・HALL閉館の動き、彩の国さいたま芸術劇場の指定管理者公募について、「長期的な事業への影響が気がかりだ」と危惧しています。
小劇場系の中堅・若手では、モダンスイマーズ『雨とベンツと国道と私』、JACROW『地の面』、劇団普通『水彩画』が複数紙で挙がりました。毎日は劇団普通『病室』も挙げ、石黒麻衣氏が「日常に潜む淡い闇を描いてみせた」。劇団チョコレートケーキ『つきかげ』は「優れた家族劇」としました。朝日「私の3点」で、徳永京子氏(演劇ジャーナリスト)がスヌーヌー『海まで100年』、バストリオ『新しい野良犬/ニューストリートドッグ』。読売「担当記者5人が選ぶ今年の3本」で、武田実沙子記者があやめ十八番『雑種 小夜の月』、森重達裕記者がヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』。
閉館したこまばアゴラ劇場。朝日は「次代につなぐ運営の形を見いだせなかったことが惜しい」、読売は「新進の地方劇団に東京公演の場を低コストで提供した功績は大きく、惜しまれる」、日経は「大企業以外、民間で劇場を維持するのが難しくなっている。公共劇場の役割は重大だ。地域演劇の重要性も増している」と総括しました。
ハラスメント問題に対して、朝日の増田記者は「演劇の持続可能な未来について立場を超えた対話が必要だ」。読売の小間井藍子記者は宝塚歌劇団や小劇場系の動向を記載、「先輩と後輩、演出家と俳優など、いびつな力関係が生まれがちな稽古場を改善することが強く求められる」としています。
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朝日新聞デジタル「(回顧2024)現代演劇 世界と協働、広げた可能性 英で『千と千尋』」、海外劇団とコラボ」 - 毎日新聞 ※要会員登録
毎日新聞ニュースサイト「この1年:現代演劇 俳優座、名作に新たな光」 - 読売新聞 ※ネット未掲載
「[回顧2024]演劇 築地小劇場100年 受け継ぐ志」(東京本社版12月17日付夕刊) - 日本経済新聞 ※要無料会員登録
日経電子版「〈回顧2024 演劇・伝統芸能〉海外展開 果敢に挑戦 尾を引く国立劇場問題」
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