東京・劇団バッコスの祭が「圧倒的大多数を動員できない」ので解散、公演で食べていくことを目標にしたカンパニーの矜持を示す

in 備忘録 on 2016年8月28日

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劇団バッコスの祭『水質調査官』

2002年に旗揚げした劇団バッコスの祭(本拠地・東京都板橋区)が、次回公演『水質調査官』(8/31~9/4、大塚・萬劇場)で解散します。本公演は30回を数え、池袋演劇祭大賞も受賞しているカンパニーで、前回公演であうるすぽっと(東京・池袋)に進出した矢先の発表でした。

主宰の森山智仁氏が前回公演で発表したあいさつ文です。

私たちは今から14年前、100人も入らない小さな劇場で旗揚げしました。
第29回公演の会場「あうるすぽっと」は300人入れます。
こんな立派な劇場で公演を打つのは、旗揚げ当初からすれば夢のようなことなのですが、劇団としての目標はあくまでももっと上でした。

演劇集団キャラメルボックスさんは、結成から13年で、1公演の動員数が40000人を突破したそうです。
古代ローマの円形闘技場「コロッセオ」がほぼ埋まる数字です。
私たちもそんな風になりたかったのですが、ここ数年は1公演の動員数が1000人前後で伸び悩んでおり、予算など様々な状況を考え合わせ、もうここが限界だと判断しました。

応援してくださる方々、支えてくださる方々も決して少なくないということは重々承知しており、また、心から感謝しています。
作品への自信も失っていません。
ただ、圧倒的大多数を動員できないなら、潔くスパッと諦めようということです。

絶妙 劇団バッコスの祭 稽古場日記「次回で解散です」

これまで様々な解散の言葉を目にしてきましたが、こんな潔い内容は初めてかも知れません。カンパニーの目標はそれぞれ異なると思いますが、バッコスの祭の場合は、動員を獲得して公演で食べていくことを目標にしていたのだと思います。一定数の観客がいたとしても、それが拡大しない以上はビジネスとして成立しないわけで、現状維持より勇気ある撤退を選ばれたということでしょう。

動員1,000名を維持していると聞いて、もったいないと思う観客の方もいるかも知れませんが、目標を達成出来ないなら解散するという判断をすることで、バッコスの祭はプロフェッショナルとしての矜持を示したのではないかと受け止めました。「自分たちは趣味で演劇をやっているのではない」ということを示したのだと思います。逆説的ですが、その意味で彼らはプロフェッショナルとしての意識を持った集団だったのだなと感心しました。

もちろん、公演以外の収入で生きていく方法を選んでいるカンパニーもあり、動員数だけがプロフェッショナルの尺度ではありません。バッコスの祭の場合は動員数を尺度にしており、それに基づいた判断だということです。

演劇は媒体に保存出来ない、記憶にしか残らない芸術です。どんなに優れていても、その公演を観た人にしか伝わらず、他の芸術のように埋もれた作品が評価されることはありません。それで終わりです。観客の方は、活動を続けてほしいと思うカンパニーに出会ったら、お金を落とし、周囲の人に薦め、SNSで評判を広めてください。解散してから残念がるのではなく、普段から全力で支援してあげてください。

元・王子小劇場芸術監督の玉山悟氏の口癖を思い出します。

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