この記事は2020年12月に掲載されたものです。
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全国紙2020年演劇回顧記事URL

カテゴリー: 備忘録 オン 2020年12月29日

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コロナ禍の一年を各紙がどう伝えるか、注目の年間回顧記事が出揃いました。

産経新聞は2019年は存在が確認出来ず、今年はエンタメのくくりで映画やテレビと一緒に短い記事しか見つけられませんでした。個々の作品には触れておらず、こちらで紹介する内容ではありません。飯塚友子記者はWeb編集室となりましたが、紙面から消えていた公演評「鑑賞眼」をWeb版で復活してくれました。こちらを楽しみにすることにしましょう。

毎日新聞がコロナ禍の対応を事実中心に淡々と伝えたのに対し、朝日、読売、日経は作品の評価にも重きを置いた記事になりました。朝日の藤谷浩二編集委員「苦境が生んだ覚醒と本気は未来へとつながっている」。読売の祐成秀樹編集委員「作り手たちの意欲が感じられる力作や劇場の節目を飾る佳作が目白押しだった」。日経の内田洋一編集委員「突然の公演中断は、演劇人に原点を見すえる機会を与えた。まさに作り手の魂が入っているかどうかが問われた年であり、公演数は減っても秀作は少なくなかった」。いずれも中堅世代の成果や挑戦を評価しています。

記事として最も充実していたのが読売新聞。コロナ禍・現代劇・物故者の3記事で構成し、小間井藍子記者「コロナ禍」は支援策やリモート演劇など細部の出来事まで網羅し、記録性が非常に高いです。「劇場再開のめどすら立っていない欧米各国に対し、日本は公演がなんとか可能で、世界の演劇人にとっての希望の光だという」とのこと。

朝日・藤谷編集委員は配信の必要性に触れながらも、こう締めくくっています。「永井愛は『客席の反応をこの身で知ることで、初めて私は自分が何を書いたかがわかる』と語った。観客は作品を完結させる最後の参加者。劇場の椅子は、瞬間の芸術の創造の場である」

最後に、東京本社版の年間回顧ではありませんが、日経は大阪本社版「2020年の関西文化を振り返る」でヨーロッパ企画の「生配信劇」を大きく紹介しました。こうした地域からの配信こそ、東京以外を拠点とする団体の可能性を広げる手段として、東京の記者が注目すべきものではないかと思います。

(参考)
日経電子版「2020年の関西文化を振り返る」

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