この記事は2021年1月に掲載されたものです。
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日本劇団協議会機関誌『join』、検証座談会「新型コロナがもたらした演劇の可能性」を読む

カテゴリー: 備忘録 オン 2021年1月11日

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日本劇団協議会機関誌『join』98号

11月末発行の日本劇団協議会機関誌『join』98号が1月上旬に届きました。10月15日に実施された「検証[zoom]座談会『新型コロナがもたらした演劇の可能性』」が収録されています。出席者は越智陽一(坊っちゃん劇場)、加藤真規(東急文化村)、金本和明(劇団民藝)、坂本もも(ロロ、範宙遊泳)、高萩宏(東京芸術劇場)の各氏。10ページに及ぶ内容から、事実関係を中心に私が注目した部分の概要です。

●緊急事態舞台芸術ネットワークは、週2回Zoomで事務局会議を継続している。(高萩氏)

●12月の劇団民藝+こまつ座『ある八重子物語』は、三越劇場が2021年3月末まで観客を入れた公演を中止したため、東京芸術劇場シアターイーストに変更したが、ざっと計算して1億5,000万円の減収。(金本氏)

●劇団民藝は「なぜこのような時期に支援を求めないのか」という観客の声を機に、6月から支援のお願いをし、公演中止で後援会の払い戻しが2割、寄付が8割という比率。(金本氏)

●ロロと範宙遊泳は、緊急事態舞台芸術ネットワークのサポートを受けて7月に法人化。J-LODlive(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)や文化庁の助成金でなんとか赤字にならずに済んだ。ただし、想定よりも観客が戻ってこない。(坂本氏)

●配信はライブと直後のアーカイブを観ている人が同じくらいで、少し間を空けてオンデマンドにすると急激に数が落ちる。鮮度が命。公演が終わってすぐ配信するほうが数字はよい。Bunkamura『プレイタイム』は3,500円で数千枚売れた。(加藤氏)

●坊っちゃん劇場はロングショットを8Kカメラで収録し、映画館のスクリーンに上映する実験をしている。8Kならカット割り不要で、「生の舞台を観ているようだ」とファンにも好評。愛媛と東京・海外の舞台が相互に観られれば。ただし、まだコストが高額。8Kカメラ1台が1,000万円、専用プロジェクターが1台3,000万円する。(越智氏)

●50%制限を開放した席をあとから買ったほうが良席になることへの不満や、隣に人がいるなら買わなかったなど、観客からの意見も多様化している。(加藤氏)

●坊っちゃんはフリーランスの俳優を業務委託契約から1年間の雇用契約にした。これにより雇用調整助成金を給付可能になり、休演中でもなんとか生活出来るだけの給料を支払うことが出来た。この制度がなくなったとき、なにが出来るのかが直近の課題。(越智氏)

●ON-PAM(舞台芸術制作者オープンネットワーク)で若手のお話会を企画した。小さいスペースでやっている設立5年くらいまでの劇団が、安心して公演出来る劇場がないのではないか。だったらいまは無理してやらないところも出てきている気がする。公演の実績がないことで、助成金の資格申請が失われることも心配。(坂本氏)

●商業演劇でも、それなりに名前のある人もかなり気持ちが折れている。「しばらく舞台はいいかな」を何人かから聞いた。舞台と映像をやっている俳優たちからも、「いまは舞台はやめておこうかな」という気配をなんとなく感じている。(加藤氏)

●主演俳優が感染して公演中止になるのは割と共有されやすいが、スタッフとして参加している若い俳優が感染して公演をやめてしまうことへのストレスが相当大きい。経済的不安よりも迷惑がかかることを最も恐れている。(金本氏)

●感染に対して個人が責任を負わないことが大切。(坂本氏、金本氏)

これだけ読むと厳しい現実のほうが多いですが、タイトルの「新型コロナがもたらした演劇の可能性」のとおり、演劇界のコミュニケーション、世代間の風通しがよくなり、配信など様々な可能性があることについては、この時点では前向きに語られています。

ほかにも様々な所見や、演劇と社会の関係に関する意見が出ています。興味のある方はこちらからお求めください(送料込み500円)。

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