高校生以下無料はゴールじゃない、あやめ十八番が始めた「同伴者限定割引」の可能性

カテゴリー: 備忘録 オン 2022年6月26日

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作品に合わせた様々な割引制度を実施しているあやめ十八番(本拠地・千葉県成田市)。前売完売もめずらしくない人気実力派でありながら、手間がかかる割引制度を大切にして、チケット料金への確固たる理念が伝わってくるカンパニーです。

2017年からは高校生以下無料、障がい者割引、18年からは外国人割引が加わりました(枚数限定)。主宰の堀越涼氏は、家業の団子屋「梅乃家」を営む社会人劇団になることを発表し、本拠地を成田に移しました。そうした環境の変化も、多様な券種に反映されているのだと思います。

次回公演『空蝉』ではさらなる試みとして、障がい者割引、外国人割引、高校生以下無料の3券種に対して、「同伴者限定割引」(1名まで、一般4,500円が3,000円に)を設けました。特に高校生以下無料は、すでに無料になっているところへ「同伴者限定割引」が加わり、ここまでの割引制度は個人向けとしては記憶にありません。無料というのは究極の割引ですから、さらにその先を考える発想が私にはありませんでした。

こうした背景には、高校生以下無料が必ずしも上限枚数まで使われていない現実があると思います。演劇ファンから見れば垂涎ものでも、興味がない中高生は価格だけでは動かないでしょう。そんなとき、2人で3,000円で観られるとしたら、親や親戚のほうから誘うきっかけになると思います。いま2Dの映画館が大人1,900円・高校生1,000円ですから、ほぼ同じ価格です。大人と一緒ならソワレでも帰りが安心で、終演後に食事を楽しむことも出来ます。

通常、割引制度は本人が対象となるものですが、あやめ十八番ではその同伴者まで対象としました。2人分の金額で考えると非常にお得で、同伴者の側から誘うモチベーションになる制度だと思いました。すでに充実した割引制度があるのに、無料や安価であることをゴールとせず、実際に使われるシーンや相手との関係性を考え抜いた「同伴者限定割引」の発想が素晴らしいと思います。

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