この記事は2016年2月に掲載されたものです。
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宮崎県立芸術劇場「演劇・時空の旅」シリーズ『三文オペラ』が上演契約を満たさず初日開場後に中止! 満席の観客を前に即興パフォーマンスをするも制作側の責任は重い――いわき・横浜公演がどうなるか注目

カテゴリー: 備忘録 オン 2016年2月6日

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宮崎県立芸術劇場『三文オペラ』

公益財団法人宮崎県立芸術劇場が企画制作する「演劇・時空の旅」シリーズ#8『三文オペラ』(作/ベルトルト・ブレヒト、演出/永山智行)宮崎公演(2/5~2/7、メディキット県民文化センター演劇ホール舞台上舞台)が、突然中止になりました。公演初日に観客が来場し、開演直前の満席状態で中止が告げられたそうです。信じられない事態です。

公式サイトの発表は次のとおりです。

  今回、この公演の上演権等を巡る問題が発生し、権利関係者と調整がつかずに、上演することが不可能となりました。
  本公演を楽しみにお待ちいただいておりました多くのお客様、関係団体等の皆様方には、多大なご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。皆様方のご期待に添えませんでしたことに、スタッフ一同心より深くお詫びを申し上げます。

ディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)ホームページ「『三文オペラ』公演中止のお詫びとお知らせ」

宮崎日日新聞Miyanichi e-press「演劇、上演直前に中止 権利問題了承得られず」

会場では、演出を務める同劇場ディレクターの永山氏と、同劇場館長で財団理事長の佐藤寿美氏が説明。ドイツの著作権管理会社との契約に、フルオーケストラによる全楽曲の演奏、脚本の改変禁止などが盛り込まれていたため、開演直前まで交渉を続けたが、今回の内容での上演が出来なくなったとのことです。

呆然とする観客を前に、本番用と思われる衣裳・メイク姿のキャストたちが登場し、演奏者と共に1時間ほどの即興パフォーマンスを行なったそうです。直前に中止を告げられたであろうスタッフ・キャストの心境を思うと、胸が痛みます。

「演劇・時空の旅」シリーズは、これまでも世界の名作戯曲を取り上げており、なぜ今回このような展開になったのか、信じられません。公共ホールの自主制作能力そのものが問われる事態だと思います。原因を究明し、詳細な報告書を公表すべきだと思います。

チケット代は全額払い戻しになりますが、主催者に常識を超えた瑕疵がある場合、それだけでよいかも議論になるでしょう。2013年、出演者の寝過ごしで公演中止となった新国立劇場『効率学のススメ』では、交通費・チケット購入手数料も対象になりました。宮崎公演は福岡などからの観客も多いと思いますので、このケースも参考にすべきではないでしょうか。

本日(2/6)現在、公演中止が発表されたのは宮崎公演(2/5~2/7)のみで、ツアー先のいわき芸術文化交流館アリオス中劇場(2/13~2/14)、KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ(3/5~3/6)がどうなるかが注目されます。

(2016年2月7日追記)

『三文オペラ』の戯曲・作詞を担当したブレヒト、作曲を担当したクルト・ヴァイルとも死後50年以上経過し、戦時加算を含めても日本ではパブリックドメインのはずです。なぜ「上演権」があるのか、理解出来ないという声が上がっています。この点も詳細な説明を希望します。

(2016年2月8日追記)

ツアー先もすべて中止になりました。

いわきアリオスサイト/ニュースリリース「リージョナル・シアター2015『三文オペラ』」の公演中止について」

神奈川芸術劇場ウェブサイト/ニュース「宮崎県立芸術劇場プロデュース『三文オペラ』公演中止について」

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