舞台芸術におけるプロフェッショナルとアマチュアの違いに迫るセゾン文化財団「viewpoint」特集、根源的なテーマに正面から対峙した文章は舞台関係者必読

in 備忘録 on 2016年10月23日

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セゾン文化財団ニュースレター「viewpoint」No.76

公益財団法人セゾン文化財団が発行するニュースレター「viewpoint」は、2015年度から財団の問題意識や関心を反映した特集主義に変更され、毎回テーマを決めて寄稿を掲載しています。9月26日に発行された76号では、小劇場関係者が興味深いであろう「舞台芸術におけるプロフェッショナリズムとは?」という根本的な問題に迫っています。

寄稿した3名の分析を抜粋します。

 ふつうの生活をいとなむ大多数の人びとが、「舞台芸術、なに?」と反応せざるを得ない社会環境の中で、「舞台芸術とプロフェッショナリズム」を問うことがはたしてどのような意味をもっているのか。

(中略)

舞台芸術にかかわるプロフェッショナルとは、それに見合う社会的な価値の創造者であり、その観点からの批判に客観的に応答する言語と論理とを求められる。

佐藤信「舞台芸術とプロフェッショナリズム」
(セゾン文化財団ニュースレター「viewpoint」No.76)

 実感としては「商業演劇界でプロとしての活動」と「個人の劇団での営利にとらわれない活動」は対立するものではなく、その両輪で走ってきたことに大きな意味があったと思っている。

(中略)

 結論としては、自分はこうでした、という個人的経験を語ることでしか言えないので、自由な創造の場でありつつ自分を拘束するような集団が持つこと、がプロへ向かっていくプロセスを育んだと言うしかないのだが、このプロセスには立場が違ってもヒントになる考えが含まれると思う。

前川知大「プロフェッショナルとアマチュアの違い」
(セゾン文化財団ニュースレター「viewpoint」No.76)

私が西欧のプロの現場で学んだことは、ダンスであっても、プロである以上、一般社会で働く人々と同じであり、仕事をする人間としての振る舞いができなければならないということである。プロとアマチュアの決定的な差は、まさにそこであると言える。

(中略)

(日本のコンテンポラリーダンスは)小さいアマチュアマーケットだからジャッジメントが入らず、既得権益が強い。その弊害として、作品を評価する基準の多様性が無さすぎて、とても狭い価値基準でダンスが評価され、閉鎖的な業界を作っている。こういうことを言うと、嫌われることは分かっているが、仕方がない。もっとコンテンポラリーダンスの多様な魅力を社会に見せることができれば、マーケットは自然と大きくなっていくだろう。そのためにはマーケットに多様な価値基準が必要である。

梅田宏明「日本的なプロフェッショナル」
(セゾン文化財団ニュースレター「viewpoint」No.76)

全文がPDF公開されていますので、時間を割いてでも通読する価値があります。この根源的な問題に対し、一人一人が思考停止に陥らず、問題意識を持ってほしいと痛感します。目先の公演は確かに大切ですが、ここに書かれているようなことを日頃から考えることが、未来を変えていくのです。

私は、今回のテーマを設定したセゾン文化財団に改めて畏敬の念を抱きました。プロフェッショナルとアマチュアの違いと言った、小劇場演劇で長年グレーにされてきたテーマに対し、正面から対峙しようと考える存在は少ないと思います。助成団体である同財団が、こうしたことにきちんと向き合おうとしたことに感動しました。助成団体だからこそなのかも知れませんが、このテーマは演劇マスコミがもっと取り組むべきではないかと思います。

最後に、佐藤信氏の一文を引用します。自分がプロフェッショナルでありたいと願う演劇人は、胸に刻んでほしいと思います。

プロフェッショナルとアマチュアが境界を曖昧にしたまま混在するこの国の「ガラパゴス」状態の面白さは面白さとして、演劇や舞踊という舞台芸術の領域には、この先、よりひろくより深い、目指すべきステージが存在することに、そろそろ誰か気付いてもいいはずなのだが。

佐藤信「舞台芸術とプロフェッショナリズム」
(セゾン文化財団ニュースレター「viewpoint」No.76)

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