この記事は2015年6月に掲載されたものです。
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芸団協「芸能実演家・スタッフの活動と生活実態調査」が初の地域別分析、関東のマスコミ出演は本当に多かった
公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が5年おきに実施している「第9回芸能実演家・スタッフの活動と生活実態調査」の結果がまとまり、5月15日からPDF公開されています。2014年8月に実施したアンケート結果になります。
注目すべきは、今回初めて設問に居住する都道府県が追加されたことです。これにより、地域別の分析が可能になりました。1974年~75年の初回調査では、関東と関西で別々に調査されましたが、結果に地域差が出なかったため、以後は地域を区別せずに調査されてきたとのことです。今回は「地方公共団体の文化行政の違いや地域経済の違いなどが、実演家の仕事に影響しているのではないか」との疑問があり、地域別分析が追加されました。
地域を「関東地方」「近畿地方」「沖縄県」「その他の地方」の4区分にしたところ、地域差の大きかった回答がいくつか出ました。私が注目したのは下記です。
- マスコミ出演をした人は、やはり関東が多い。
「昨年1年間に行った行動」を複数回答する設問では、「映画・放送・メディアへの出演・演奏」の関東が36.0%なのに対し、近畿は25.7%、その他は18.3%、沖縄は9.1%でした。関東のマスコミ出演機会が多いことが確認出来ます。
- 関東は外部出演、近畿は主催公演こそがスキルアップと考える。
「技術・技能を向上させるための必要条件」を3つまで選択する設問では、どの回答が最も多いかを見ると興味深いです。関東では「様々な分野の舞台、映像制作に従事する機会があること」、近畿は「芸能や映画等の作品を発表、公開できる場の確保・充実」、沖縄は「稽古、練習のための場所が確保・提供されること」、その他は「プロのための研修が充実すること」が1位です。外部出演を望む関東、自分たちの公演を望む近畿、稽古場を望む沖縄、研修を望むその他ときれいに分かれました。
- 公共ホールへの期待が比較的高い近畿とその他。
「安心して活動できるための必要条件」を3つまで選択する設問では、関東に比べ「公共劇場等が地域の文化拠点として機能すること」が近畿とその他で高くなりました。沖縄は「文化芸術全般に対する社会の理解や信用が深まること」がとても低く、元々文化への理解がある風土なのだろうと思います。
なお、「概観」で高瀬将嗣氏(日本俳優連合)も指摘されていますが、給与制・年棒制とは思えないのに(=個人事業主と思われるのに)、「給与所得だけで確定申告していないので、所得控除の対象になった必要経費はない」とする回答が多いという、不思議な結果も出ています。個人事業主なのに確定申告していない人が一定数いる可能性がありますが、たとえ所得が基礎控除の38万円未満であっても、必要経費や各種控除を考えると絶対にすべきでしょう。