この記事は2016年12月に掲載されたものです。
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劇場費は28年前に比べてどれだけ上がったのか――計算すると公演予算に占める割合はむしろ下がっていた
劇場費が高いというツイートを見たので、確認してみました。私の手持ちの資料で、劇場費が確認出来る最も古いものは、1989年に発行された芝居お助けプロジェクト編『芝居がやりたい!』(JICC出版局、現・宝島社)です。
この本に劇場費が書かれている劇場のうち、現存するのはザ・スズナリ、新宿シアターモリエール、こまばアゴラ劇場です。現在の劇場費は公式サイトで税別価格を参照しました。
(ザ・スズナリ)
- 本番
平日5.5万 ⇒ 1ステ7万(127%増)/2ステ8万(145%増)
土日祝7万 ⇒ 1ステ9.5万(136%増)/2ステ12.5万(179%増) - 仕込み
4.5万円 ⇒ 平日6万(133%増)/土日祝6.5万(144%増)
(新宿シアターモリエール)
- 15万 ⇒ 平日17.5万(117%増)/土日祝18.5万(123%増)
(こまばアゴラ劇場)
- 8万円(値引き可能性あり) ⇒ 2003年度から貸館制度全廃(一般5万/提携2万/劇場主催無料、制作支援金あり)
こまばアゴラ劇場は貸館自体を廃止したので比較出来ません。スズナリの値上げ率が大きいですが、元々スズナリは東京で客席単価が最も安いと言われていますので、それを是正したのでしょう。いまでも客席を多く設定すれば、こまばアゴラ劇場より安くなる場合もあるくらいです。
これに対し、チケット代はどのくらい上がったのでしょうか。『芝居がやりたい!』を見ると、当時スズナリやモリエールを使用していた劇団21世紀FOXが2,000円と書いていますので、これが相場と見てよいと思います。
現在、スズナリやモリエールを使用する団体のチケット代は3,500円以上だと思いますが、3,500円だと175%増です。これを劇場費の値上げ率と比較すると、スズナリの本番土日祝2ステ以外は上回っており、相対的に劇場費の公演予算に占める割合は下がっていることになります。
劇場費が安すぎると、当然ながら民間劇場はやっていけません。批判するなら劇場に対してではなく、芸術団体ばかりに公的助成して、劇場の貸館事業にしない国や自治体の文化政策を批判すべきだと思います。
どうしても劇場費が出せないなら、劇場費のかからないスペースで発表会や小規模公演を重ね、実力を周囲に示していくしかないと思います。そして、実力を認めた公共ホールやアゴラのような助成金を受けている劇場で提携公演するか、その過程で動員を増やして民間劇場の劇場費を払える体力をつけるかの二択でしょう。