この記事は2019年10月に掲載されたものです。
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風姿花伝プロデュースに見る劇場内カフェの可能性
シアター風姿花伝(東京・中落合)が年1回上演する「風姿花伝プロデュース」の名物が、ロビースペースでの特設カフェ営業です。今年のvol.6『終夜』(2019/9/29~10/27)でも、さらに進化した形で提供されました。
昨年のvol.5『女中たち』では、ロビー前のバルコニーにテーブルを置いた形でしたが、今年は常設店舗と見紛うばかりの洒落たコーヒースタンドがロビー内に設置されました。素晴らしい完成度で、このスタンド自体が一つの舞台美術作品だったと思います。
ポットコーヒーだけでなくエスプレッソマシンも備え、店主は劇場スタッフで公演のアシスタントプロデューサーを務める中山大豪氏。私はホットコーヒー(400円)をお願いしましたが、豆にこだわっているとのことで、とてもおいしかったです。専門店で飲むスペシャルティコーヒーと遜色なかったと思います。
今年は新たな試みとして、人気店から仕入れたスイーツを週替わりで販売。これも評判だったようで、素晴らしいアイデアと実行力だと思います。
このカフェ最大の特徴は、客席に持込自由であること。通常、キャップの付いたペットボトルまでしか認めていない劇場が多いと思いますが、この公演ではカップにフタ(トラベラーリッド)をして、最初は飲み口にシールをしておくことで持ち込みを認めています。販売時には持ち込む場合の注意も丁寧に説明。キャップの付いたペットボトルがOKなら、フタをしたカップもOKにしないと確かに不公平かも。
シアター風姿花伝はどの駅からも少し離れていて、劇場まで来てしまうと近所のカフェも限られます。天候や客層にもよると思いますが、秋冬の風姿花伝プロデュースで劇場ロビーに温かい飲み物があるとホッとします。東京都の場合、特定多数のイベントに営業許可なしで出店可能なのは年5日までなので、1か月に及ぶ風姿花伝プロデュースは一般の営業許可を取られているのでしょう。ぜひ、提携公演などでも開店していただけたらと思います。
ロビースペースはそれだけ狭くなりますが、それを差し引いても余りある魅力で、カフェ営業をあきらめている小劇場の参考にしてほしい事例です。